第1回「浮気・不倫の慰謝料の相場は?」
夫(妻)の浮気が発覚し,浮気相手に慰謝料を請求するとなると,やっぱり気になるのは慰謝料の金額ですよね。慰謝料の裁判上の相場は一般的におよそ数十万円~300万円だと言われていますが,実際のところ,よく分からないという方が多いのではないでしょうか。
そこで「弁護士が教える!浮気・不倫の慰謝料講座」第1回では,浮気・不倫の不貞行為から生じる慰謝料の裁判上の相場に関するポイントをご説明します。
え!浮気・不倫の慰謝料には明確な基準がない!?
浮気・不倫の慰謝料とは,浮気をした夫(妻)とその浮気相手から受けた精神的苦痛に対して支払われるお金です。夫(妻)や浮気相手に慰謝料を請求することは,不法行為に基づく損害賠償請求として法律で認められていますが,実は慰謝料の金額に明確な基準はなく,さまざまな事情や状況を考慮した上で決まります。
そのため,浮気・不倫慰謝料の金額は過去の判例などを参考に,単に浮気をしただけなら(離婚をせず,夫婦関係を継続する場合)およそ数十万円~100万円,浮気が原因で離婚に至った場合はおよそ100万円~300万円が裁判上の相場です。金額にかなりの幅やバラつきがありますが,浮気・不倫による損害が大きいほど慰謝料も高くなる傾向であると考えられます。
浮気・不倫慰謝料の裁判上の相場(目安) | |
---|---|
夫婦関係を継続する場合 | およそ数十万円~100万円 |
浮気が原因で離婚に至った場合 | およそ100万円~300万円 |
上記の表は,裁判になった際の慰謝料の相場です。裁判せずに相手方と話し合いで解決する場合には,この通りになるとは限りません。話し合いでは,問題の早期解決や精神的損害などを考慮して金額が決まることが多く,離婚が決まっていなくても,離婚した場合と同様の慰謝料で和解に至るケースもよくあります。
余談ですが,慰謝料といえば,芸能人の高額な離婚慰謝料が話題になることがありますよね。これは財産分与を含んだ金額と考えられます。そのため,もし裁判で慰謝料の金額を争った場合には,いくら稼ぎが莫大でも,億単位の支払いを命じる,という判決がくだることはまずないでしょう。裁判では,慰謝料の相場(目安)が基準となるからです。
浮気・不倫の慰謝料の金額は,さまざまな事情や状況で増減される
慰謝料の金額は,浮気による別居や離婚のみならず,婚姻期間の長短や不倫の内容,子ども有無や経済的な事情などで変わってきます。ここで浮気・不倫による慰謝料の金額を左右する主な項目についてご紹介いたしますね。
慰謝料の金額を 左右する項目 |
理由 |
---|---|
婚姻期間 | 被害者(浮気された方)の心情の配慮や離婚後の再スタートが困難になりやすいという理由から,婚姻期間が長いことは増額要素とされています。 |
浮気発覚前の婚姻生活の状況 | 浮気の発覚以前,家庭生活は円満だったか,崩壊寸前だったかという事実によって左右されます。もし,浮気が発覚する以前から家庭生活が崩壊寸前であった場合,慰謝料は減額される傾向にあります。 |
自分自身の落ち度 | 夫(妻)が浮気をするようになった落ち度が自分自身にある場合(過去に浮気をしていた等)は,慰謝料は減額される傾向にあります。 |
浮気相手の認識,意図 | 浮気相手が,夫(妻)が既婚者だと知っていたか否かです。たとえば,相手が既婚者と知りながら家庭を壊すつもりで浮気をしていた場合,行為が悪質であると判断され,増額となる場合があります。 |
浮気の期間,具体的内容, 頻度 |
浮気の期間が10年以上など長期間にわたる場合は,慰謝料の増額要素とされています。 |
浮気の否認 | 浮気が認められる状況で浮気相手が否認を続けるケースです。そのような場合,被害者の心情を踏みにじったと判断され,増額となる場合があります。 |
不貞関係解消の約束反故 | 以前も浮気をしており,二度としないと約束を交わしていたにもかかわらず,再び浮気をした場合です。このような場合,悪質と判断されるため,慰謝料が増額となる場合があります。 |
夫(妻)と浮気相手の 子どもの妊娠 |
夫(妻)と浮気相手との間に子どもができた場合,極めて大きなショックをもたらします。そのため,夫(妻)と浮気相手との間で妊娠が発覚したことは,増額要素とされています。 |
精神的苦痛 | うつ病になるなど,浮気によって大きな精神的損害が発生した場合,それを裏付ける証拠(診断書など)があると,増額となる場合があります。 |
夫婦間の子どもの有無 | 夫婦間に子どもがいる場合は,婚姻関係破綻による影響が大きく,また,精神的な損害も大きいことが通常であるため,増額となる場合があります。 |
浮気相手の反省,謝罪, 社会的制裁 |
浮気相手が真摯に謝罪していたり,社会的制裁(退職など)を受けていたりする場合は,慰謝料が減額される場合があります。 |
いかがでしたか?ご自身のケースの慰謝料が,おおよそ想像できましたか?
慰謝料は実にさまざまな事情やケースを総合的に考慮して,増えたり,減ったりするものなんですね。
ここで簡単に慰謝料の金額についてまとめてみると,下記のようになります。
- 浮気・不倫による「損害」の大きさによって慰謝料の金額は変わる
- さまざまな事情や状況によって慰謝料の金額は増減される
実際,浮気相手に浮気・不倫の慰謝料を請求する場合には,これまでの事情を主張・立証できるかどうかが金額の増減に大きく関わってきます。単純に,浮気が原因で「非常に辛かった」と主張するだけでは説得力に乏しく,証拠が必要となります。たとえば,精神的苦痛からうつ病などの病気になってしまった場合には,「診断書」などの証拠が有用になります。
でも,証拠を個人的に集めることは難しいですし,そもそもどのような証拠を集めればよいのかがわからないと思います。そのため,慰謝料の金額で損をしないためにも,慰謝料について実務経験と専門知識を持っている弁護士に相談してみることをおすすめいたします。
監修者情報

- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 法政大学法学部、学習院大学法科大学院
私が弁護士を志したきっかけは、日常生活の中で時々、法的な問題に直面することがあったことです。法律というものは難解なものであると思われている側面が強いと思います。私も勉強するまでは、ちょっと近づきがたいものだと思っていました。しかし、弁護士となったからには、依頼者の方が何に悩んでいて何を求めているのかをしっかりと共有し、少しでも分かりやすく法的な問題点をご説明し、今後どのように問題解決に向けていくことが出来るのかを一緒に考えていきたいと思っております。