第3回「離婚するのと慰謝料請求、どちらがいいの?」
夫(妻)の浮気・不倫に直面すると、どうしても頭によぎる離婚の二文字。でも、離婚後の経済的事情を考えてしまうと、なかなか決断できない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、「弁護士が教える!浮気・不倫の慰謝料講座」第3回では、離婚する場合と、離婚せずに慰謝料請求をする場合、どちらがいいのか、一緒に考えていきましょう。
浮気した夫(妻)と離婚すると、お金で損するケースもあり!?
夫(妻)の浮気が発覚し、離婚を考えた場合、浮気相手への慰謝料請求だけでなく、子どもの親権や養育費、財産分与、年金分割など、多くのことを事前に決めておく必要があります。「夫(妻)の浮気が原因で離婚になったのだから、お金を支払うのは全部、夫(妻)だ」と思われる方がいるかもしれません。しかし、実際にはそうはならないケースがあります。下の表をご覧ください。「相手のせいで離婚するのに、どうして?」と思うお気持ちはわかりますが、実は浮気と養育費や財産分与は無関係なのです。
相手の浮気が原因でも、離婚後、 お金を支払うことが考えられるケース |
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子どもの養育費 | 浮気・不倫した配偶者が親権者となった場合、あなたが養育費を支払うことに… |
財産分与 | 婚姻期間中に2人の協力で築いた財産のうち、あなた名義の財産のほうが多い場合、あなたが多く支払うことに… |
年金分割 | 婚姻期間中の厚生年金や共済年金などを、あなたのほうが多く納付していた場合、これまで納付してきた年金の保険料納付記録を、浮気・不倫した配偶者に分けることに… |
たとえば、浮気が原因で離婚し、浮気相手(または配偶者)から高額な慰謝料を獲得できたとしても、あなたが子どもの養育費や財産分与、年金を支払うことになった場合、長期的に計算すると、手元に残る慰謝料が少なくなったり、慰謝料よりも多く支払いが発生したりと、結果的に損してしまうおそれがあります。
一方、あなたが養育費や財産分与、年金を受け取る立場だった場合は、どうでしょうか?慰謝料と養育費など両方を受け取るわけですから、一見すると損することはなさそうですよね。ですが、気をつけてください。長期的に考えると、損をしてしまうケースもあります。その理由を、わかりやすく具体例をあげてご説明いたしますね。
Aさんは、夫であるBさんの浮気が原因で離婚し、浮気の慰謝料として250万円を受け取りました。また、Aさんは、10歳のお子さまの親権者となり、お子さまが成人するまでの10年間、毎月10万円の養育費を受け取ることになりました。10年間の養育費は合計1,200万円で、浮気の慰謝料と合わせ、1,450万円を受け取る内容で合意しました。
ここまでを聞いた限りでは、とても損しているとは思えませんよね。しかし、続きをみると…。
実はAさんはBさんから、家族の生活費として毎月20万円を受け取っていました。仮に、離婚しないで10年後まで20万円を受け取り続けていたら、合計2,400万円を受け取れる計算になります。離婚した場合に受け取る予定の1,450万より、950万円も多い金額です。さらに、離婚しないで浮気相手から慰謝料を獲得すれば、受け取る金額はさらに多くなります。
離婚の際には、このようなことが起こり得ますので、浮気が原因で離婚を決断する前に、離婚や慰謝料問題に詳しい弁護士へ、一度ご相談することをおすすめいたします。
後悔しないためにも慰謝料請求したあとに離婚をじっくり考えることが一番!
ここまでお読みになって、結局,どちらが得なの?と思われる方がいるかもしれません。残念ながら、一人ひとりの事情によりますので、どちらが得だと判断することは難しいですが、まずは浮気相手から慰謝料を獲得し、そのあとに離婚するか、やり直すかを考えるという選択肢が一番よいと考えます。
ここで、「ちょっと待って!離婚したほうが慰謝料の相場は高いはずでしょ?」と思った方がいらっしゃるかもしれません。たしかに本コラムの第1回で、離婚したほうが慰謝料の相場が高いとお伝えしました。しかし、それはあくまで裁判での話です。慰謝料請求は一般的に話し合いで解決する場合が多く、浮気された方の精神的ショック、過酷な状況などを踏まえて協議されるため、離婚した場合と同等の金額を受け取れるケースもあります。
ここで、今回学んだことを簡単にまとめてみると、以下のようになります。
- 離婚せずに、慰謝料請求した場合、得になるケースがある
- 浮気が原因で離婚した場合、金銭的に損するケースがある
以上のことから、浮気が発覚したら、離婚を決断するのではなく、まずは浮気相手に慰謝料請求を行い、その後、将来のこと、子どものことなどをじっくり考えてみてはいかがでしょうか?後悔しないためにも、離婚や慰謝料問題に詳しい弁護士に一度、相談してみるのもよい方法かもしれませんね。
監修者情報

- 資格
- 弁護士
- 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 法政大学法学部、学習院大学法科大学院
私が弁護士を志したきっかけは、日常生活の中で時々、法的な問題に直面することがあったことです。法律というものは難解なものであると思われている側面が強いと思います。私も勉強するまでは、ちょっと近づきがたいものだと思っていました。しかし、弁護士となったからには、依頼者の方が何に悩んでいて何を求めているのかをしっかりと共有し、少しでも分かりやすく法的な問題点をご説明し、今後どのように問題解決に向けていくことが出来るのかを一緒に考えていきたいと思っております。